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グラフィックアーティストが表現する官能小説

mov 氏と打ち合わせしながら、プロジェクトを進めていきました。
携帯電話で小説を読んでもらうのは、意外に大変です。一覧性が極端に低いローテクな仕様には、さまざまな制限がついてきます。文字量を決めるため、試行錯誤を繰り返しました。

mov氏とプロジェクトの打ち合わせ

*カフェでプロジェクト(ケータイ小説)の打ち合わせ*
*右の端末は mov 氏が所有するもの、シブすぎる*

少ない情報量で「官能小説」の機能を働かせるには、高度な文章テクニックも必要です。
「そもそも官能小説って、どういうもの?」mov 氏の素朴な疑問は、このプロジェクトを大きく動かすことになりました。”絵”という表現媒体にもどって、もう一度「エロ」について考えてみることにしたのです。

取材(写真)

*取材へ「エロの定義を探究する」*
(※創作活動に取材は欠かせません)

性をテーマとした美術は、20世紀初頭ドイツの美術史家エードゥアルト・フックスによって、「エロティック美術」として体系化されました。3つに大別すると次のようになります。

(1)宗教的、医学的、生物学的関心と結びついたセクシャルイメージ
(2)性的欲望を喚起させる狙いで表現されたポルノグラフィ
(3)あからさまな模写を避け、情感や雰囲気を喚起させるエロティックイメージ

アートかポルノか、という議論は、この3つの定義を主張し合っているわけですね。
小説の場合もまったく同様。一般的に官能小説といえば、性的欲望を喚起させる狙いで表現された露骨なものが多いようですが、中にはあからさまな性表現を避け、むしろこれらを暗示させるようなテクニックを使った作品もあります。官能小説の定義もこのように分かれてきます。

取材(写真)

*取材へ「自然と結びつくエロを探す」*
(南国でも、どこでも取材へ行きます!)

官能小説を書いてみたいが、勇気がない。
こういう言い方をする人が多いのはなぜでしょう?性的欲望を喚起させる露骨な表現の作品だけを考えているのでしょうか。
mov 氏との意見交換でも話題になったのは、アートとポルノの境界線を演出する「逃げ」を使ってみてはどうかということです。本音は、性的欲望を喚起させることであっても、アートという衣を着させてみるのです。
ちょっと問題発言になりましたが、官能小説を1つに定義できないのなら、要はきっかけです。自分自身が納得できるかどうか、まずはここが重要です。

「エロっぽいけど、カッコいい!」
こんな評価を受ける作品があります。作者本人は、単純にポルノを描いただけなのに、周囲の影響によって付加価値がついてしまう。これが進むと、アートジャンルに顔を出すことになるのです。
官能小説を”安全”に書きたい人にとっては、興味深い話でしょう。
例えば、「YELLOW」という写真集の歴史をたどっていくと、多くのヒントを見い出すことができます。なぜ、CD-ROMで出版することになったのか‥など。

参考:アダルトCD-ROM

*1995年に KUKI から発売されたデジタルマガジン*
(パッケージには、コンピュータソフトウェア倫理機構の「18歳未満お断り」ラベル)

mov 氏の描く絵画から推測しても、女性向けの(限りなく恋愛小説に近い)アートポルノになる可能性が高かったのですが、結果的に安全策をとらず「性的欲望を喚起させる狙いで表現されたポルノグラフィ」に挑戦することになったのです。
「いいんですか?公開されるんですよ。」という確認にも、「OK」と一言。
mov 氏は、「官能小説というのは、あくまで性的興奮を煽り立てることを目的とする」と定義したわけですね。

それでも、ただの官能小説にはならないだろう、という期待がありました。
創作活動におけるグッド・アクシデントとコインシデンスがあるからです。
コインシデンスというのは、偶然の一致。創作していて、プラスに働くアクシデントと、そのとき生まれる偶然の一致。mov 氏の創作活動には、このような効果を期待できる要素が多かったのです。

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